sakanathlon

sakanaの日記

暗闇の中、私は子どもに戻ってしまう

研究者であるならば当然今日XXX学会のウェビナーを見るべきだった。

当然視聴しなければいけない重要で最新のトピックだった。 だがわたしは見なかった。 家族を...妻を、子どもたちを優先した。夕飯を作り、子どもを風呂に入れた。 優先したといえば聞こえはいいが...厳しくいえば...家族を言い訳にして 怠けた。厳しくいえば家族に力強く、粘り強く説明すれば納得してもらえた かもしれない...本当か?他に選択肢があったのか? とてもそうは思えないのに、それを実現してしまうやつがいるだろうことに、 身をねじ切られるような思いになる。

またひとつ最先端から遅れてしまう。 自立した研究者になるなんて夢のまた夢。 海外での活躍なんて、考えることもほとんどなくなってきた。 せいぜい職場で軽蔑されないようにやり過ごし、 ヘラヘラしていることしかできない。 そして、それもそろそろ限界であることに息が詰まりそうになる。

寝室で息子を寝かしつけながら、私の頭は自分の子ども時代に戻る。 今日は中学生になっていた...と思う。XX駅の西口を出て自転車置き場へ とぼとぼと向かう。 たいしたことも考えずに。晴れてはいない、薄曇りだ。カラスが何羽か そこらへんをあるいている。 学ランを着て、第一ボタンを開けている。帰り道に1人でラーメンでも 食べたのだろう。部活に行っていないということは、テスト期間中に違いない。 西口近くの公園には自転車置き場の入り口になっている立方体のオブジェが屹立している。 「わたし」はその中に入り、階段を下る。 自転車置き場の空気はひんやりと、湿っている。そこで「わたし」は、朝慌ただしく置き去りにした 誰かからもらった古い自転車にまたがる。わたしは自転車置き場を自宅の方の出口から出て、 近くのスーパーの方向にゆるゆると進んでいく「わたし」を見送った。 「わたし」がその後どこに言ったかは知らない。 限られた小さな世界の中ではあるが、「わたし」を束縛するものは何もない。 夜は母が作った料理を食べ、食後はゲームでもやるのだろうか。 FF7かFF8か?帰り道に寄った古本屋で買った漫画を読むのかもしれない。 いや、テスト前だから勉強するだろうか。

暗闇の中で寝転んでいるとこんなことばかり考えてしまう。 いまだに、こんなことばかり考えるのは情けない。 もう社会人で、父親で、大人なのだ。 だというのに、暗闇に寝転んでいると現実から目をそむけて自分の子供時代に帰ってしまう。

寝室から出てすぐにこのことを書いて大切にしまっておきたかった。 しかし家事はいくつも溜まっていた。おまけにPCのbluetoothを間違えて切ってしまって、 キーボードもマウスもつながらなくなった。設定し直す必要があった。 本当に苛々した。本当にだ(PCに罪はない)。 TVから聞こえてくるくだらない話が神経を逆撫でる(TVに罪はない)。 とにかく自分が愚かだと罵りながらも平気でいる自分が許せなかった。

さて、今日夕方に、「今日は夜ふかしして、なんとか仕事を終わらせたい」 という計画がなかったか? そろそろ1時だ。憂鬱で、本当に苛々して、眠い。 そんなお前はおそらく少しして寝るだろう。 ああ今日も家族を支えて、自分のことがなかなか進まなかった、と。

お前は本当に子どもだったときから家族のせいばかりにしてきたのでは ないか?本当は自分が悪いというのに。 立場が変わっただけでまた同じことをしようとしているな、と思う。

...少し混乱している。認識も誇張され、歪んでいる。 この話はおわり。

BACK

TOP PAGE